2007.07.03

読了:ハンプティ・ダンプティは塀の中

これまた創元ミステリ・フロンティアから、「ハンプティ・ダンプティは塀の中」(蒼井上鷹)

留置所を舞台とした連絡短編集。一癖も二癖もありそうな住人達が語る奇妙な事件に、何とか合理的な説明をつけようと四苦八苦する新人犯罪者でもある主人公ワイさん。そんなワイさんを尻目に、魔法のように鮮やかに事件の構造を提示するマサカさん。彼の正体は?なぜ彼は留置所に入れられたのか?彼の目的は何なのか?

と、頑張って興味を惹かれるような粗筋を書いてみましたが、感想としては・・・・・えーっと・・・・続編が出そうな終わり方ではありますが、一発芸的な作品として終わらせておいた方がいいように思います。
以上。

 
って、それじゃあんまりなのでもう少しツッコむと。

マサカさんがいわゆる安楽椅子探偵なのですが、事件の真相へ至る過程があまりに機械的で、読み手としては置いてけぼりを食らった気分になります。あと、所々致命的にご都合主義的な展開があってゲンナリしました。

せっかく色々と個性ある人物が配置されているのに、留置所という舞台の制約のせいか、それぞれのキャラクターがいまいち発揮できていないように思います。もっとドタバタした感じで話が進めば面白いのに。

 
 
創元を盛り立てるつもりで始めたブックレビューなのに、逆効果になってるように見えるのはきっと気のせいです。

 

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2007.06.27

読了:れんげ野原のまんなかで

先日の朝日ソノラマショックを受けて一念発起しました。ここは一読者として、ブログを通し東京創元の良さを紹介すべきではないか。そのためには自分が読んだものの紹介をしたらよいのではなかろうか。ついでに、あわよくばアフィリエイトで小銭を(以下略)

はいそこ。
PV稼げない過疎ブログでアフィもクソもねえだろとか言わないように。

それはさておき、どうせ東京創元に限ると速攻ネタが尽きるのは目に見えてるので、まあ難しく考えずにアレコレ読んだ本を紹介していきます。

で、その第一弾。
ミステリ・フロンティアシリーズ「れんげ野原のまんなかで 」(森谷明子)

図書館が舞台の中心となって起きる不思議な謎を、司書である主人公やその先輩達が解決してゆくという形式の連作短編集になっています。系統的には血生臭い事件や殺人が起きない、北村薫の日常の謎を扱った一連の作品に連なるかと思いますので、そういうのが好きな人にはお勧めです。

作中にいくつか古典や児童文学の名作がとりあげられており、ああこれは昔読んだなとか、この作品は読んだ事がないな、なんていう楽しみ方もできるかもしれません。

で、これを読んで何となく比較したのが、同じくミステリ・フロンティアの「配達あかずきん」(大崎梢)でした。こちらの主人公は書店員が主人公ですが、職場の仲間が探偵役となり日常の謎を解決するというスタイルは同じです。

ただ、あかずきんの方は謎解きがやや強引なのと、書店ネタが若干鼻につくのが気になりました。あと人物描写や情景描写が、決して高評価ではないれんげ野原よりもさらに低く感じるため、結果として話を読んでもあまり記憶に残りませんでした。

私が司書という仕事に思い入れがあるせいかと思ったのですが、嫁に聞いてもほぼ同じ評価で、あかずきんの作者は本が好きというよりも本屋という仕事の方が好きなんじゃね?という結論に達しました。あくまで印象なので、実際はそんな事はないとは思いますが。

時に本の感想からは少しそれますが、近頃、「書店員が選ぶ本屋大賞」が一つの権威となって本の売れ行きを左右したりしていますが、あれって本当に必要なんですかね?

もちろん「書店員は本を売ってりゃいいんだ」なんて事は言いませんし、膨大な量の出版物が発行され玉石混淆な状態の中、今読むべき本をピックアップして読者に提示するのはとても素晴らしい事だと思います。しかしランキングをつけて賞を与えるのはやりすぎなんじゃないかと。正直なところ、商売の匂いがしてあまり好きではありません。

読者や作家・作品のためというのであれば、手を取って書籍の海を渡るルートを教えてあげるよりも、海図を渡してその読み方を教え、果てはなぜそのような海図になったのか、その海図を元にどうルートを開拓すればよいかを提示する方が、最終的には皆が幸せになれるような気がします。

久しぶりにまともな事を書いたら脳みそがこむら返りをおこしそうなので、今日はこれでおしまい。

  

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2005.07.19

時間泥棒

「陰摩羅鬼の瑕」(京極夏彦:講談社ノベルズ)を読んだ。

まともに話が進むのは半分過ぎてからだわ、前半1/3読んで予想したオチと寸分違わないところに着地してくれるわ、ページ数の割には中身スカスカだわ大変だった。

京極堂シリーズ最大の駄作だな、こりゃ。

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2005.03.04

ちびくろさんぼ

わっはっはっは。
二十世紀最大級の愚行(当社比)、あの弾圧騒動から幾星霜、ついに「ちびくろさんぼ」(岩波版)が帰ってきましたよ。偉いぞ、瑞雲舎。


いつか子供に読んであげて、ついでに人間の愚かさについても教えてあげようっと。

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2004.06.11

世界の中心で本を読む獣

小説の世界にも流行り廃りというものがあり,ここ数年の流行を列挙してみると以下のようになるかと思います。

◎哲学モノ
流行った本: ソフィーの世界(ヨースタイン=ゴルデル/日本放送出版協会)他

◎生物モノ
流行った本: パラサイト・イブ(瀬名秀明/角川書店)他

◎恋愛モノ
流行った本: 世界の中心で(個人的にどうでもいいので以下略)

なかには「コレ,単に推薦文書いた人間の影響じゃねえのか?佐藤正午だった時は大して売れなかったくせに」なんてものもありますが,きっとそれは気のせいです。


このような流れが出来た理由と,次に流行るものをちょっと考えてみたいと思います。


小説とは,非常に乱暴なまとめ方をすると「”人間とは何か?”と問い続けるもの」だと私は思います。この事を前提とすると,ある程度それぞれが流行した理由が見えるのではないかと思います。

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■哲学モノが流行した理由
哲学という学問自身が「人間とは何か」あるいは「世界とは何か」はたまた「その両者の関係とは」と問い続けた学問です。そう言った意味で,小説の原点とも言える学問が広く読まれるのは,むしろ必然と言っても良いのではないでしょうか。

■生物モノが流行した理由
さて哲学的に人間について思索が一通り済むと,次の段階として,その検証やあるいは全く別のアプローチを探すというのが自然な流れでしょう。そこで白羽の矢が立ったのが,人間の生物学的位置づけを科学的に研究し続ける生物学だったのです。

※ここで「別に生物学→哲学って流れでもいいじゃんよ。」という疑問もあるかもしれませんが,これはバブル,つまり物質万歳・ビバ科学な時代が崩壊した反動として、まず始めに精神的なモノ=哲学という順序だったのではなかろうかと思います。

■恋愛モノが流行した理由
さて個体としての人間について考えた後は、関係性における人間について考えるというコースが一般的ではないでしょうか。「私」と「私以外の貴方」との関係性という意味で,恋愛モノは格好のモデルケースです。

え?なに?恋愛以外でも関係性のモデルは構築できるだろうって?そこはそれ,人間の異性に対する本能っつーか煩悩っつーか。大体,百人一首だって過半数が恋の歌でしょ。そういう空気読めよ。
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さてパーフェクト且つブリリアントなロジックにより,今現在において,つまらなくはないけれどそこまで売れるほど面白くないだろうという恋愛モノが流行している,その低層部分の流れが分かったかと思います。(ちなみに上層部分は言うまでもなくマーケティング)

では,次にくるべきものはなんでしょうか。

恋愛モノにおいては,基本的に「私」と「貴方」という”1対1”の関係性です。この関係性を発展させると,「私」と「貴方達」という”1対n”になるのではないでしょうか。

人間にとっての初めての”1対n”という関係性。
それは『家族』でしょう。

今後5年程度のスパンで,例えば干刈あがたをPOPにしたような,そんな小説が次にくるのではないかと思っています。


例え予想が外れても,生温かい目で見守ってやって下さい。
それが大人ってもんです。

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2004.02.03

今さら綿矢りさ

「インストール」を読み終わって,今「蹴りたい背中」を読んでいるのですよ。書評なんかはそれこそ掃いて捨てる程あるので,私ごときがどうこう言ってどうなるってもんでもないのですが,敢えて一読者として

自分で金出して買わなくて良かったな,と。

かつて私が卒論で作家論をセコセコと書いていたとき,自身でも評論を書かれていたゼミの先生は「素人(一般読者)が作品を最後まで読んだのであれば,それは読者として一定の責務を果たしており,少なくともその作品について感想を言うのは読者の権利だ」と仰っておりました。(ちなみにこの言葉の後は「しかし,『暗い』だの『嫌い』だのというのは感想ではない。最低限の感想は『面白い』か『面白くない』のどちらかだ」と続きます)

その言葉を拡大解釈&エクスキューズとさせて頂きますが,面白くないものは面白くないんでしょうがいないんです。お酒全般好きだけどビールはあまり好きじゃないという人がいるように,私にとって綿矢りさは体に合わなかったのかな,と。

私は,なんていうか,物語を読んで「うわ。どうやったらこんな話を思いつくんだ」とか「この作者,絶対おかしいって。(良い意味で)」といった感覚を味わいたいので,おそらく綿矢りさの売りの一つである『漠然とした屈託』へ共感が持てず非常に退屈でした。

「安っぽい共感なんか要らない,自我が圧倒されるような物語が欲しい」と私は思うのですよ。

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2003.12.16

無料貸本屋

えー。去年の話になるのですが,日本文藝家協会が政府等に対して要望書なんてものを出してるんですよ。

要は,

作家が本を書く

図書館が本を購入して大勢に貸し出す

本を買わずに借りて済ます人が多くなる

作家に印税が入らなくなる

( ゚Д゚)マズー

というわけなんですね。

ちなみにこの要望書は,”図書館の貸し出しに対して作家の懐に金が入る制度を作れ。あとついでにお前(政府)も金を出せ。”という意味の文章で結ばれています。


・・・どこから突っ込んでいいのか迷うほど突っ込みどころ満載なんですが。

そもそも「本の売上が落ちている事」と「図書館の貸出冊数が増えている事」の間には,ふかいふか~~い川が流れているはずです。ロジックの世界で生きているはずの人達に,なぜその事がわからないのでしょう。

こんな言いがかりを見ると,「売れないのはてめえらの本がつまらないからなのに,難癖つけて金をせびろうとしてんじゃねえだろうな」なんて邪推をしたくなってしまいます。


こんな事を考えるのは,先日図書館で借りた本が近年希に見る程つまらない本-ああそりゃもう腹立たしさを通り越して意地で読破する程に-だったからではありません。ええ,ありませんとも。

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