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2007.11.27

メディウム(3)

さて、前々回前回と壮大なる遠回りをして、やっとここまで来ました。最後に「情報がコモディティ化した中でのマスメディアが選択可能な戦略」について考えてみたいと思います。

とはいえマスメディアと一言でまとめるのもアレなので、話の出発点に立ち返り、ここでは新聞及び新聞社に限定して考えます。

新聞社が選択可能な企業戦略

デフレ経済下、もしくは取り扱い商品がコモディティ化した時に企業が取りうる戦略は、概ね以下の3パターンになるかと思います。(実際は単一手法ではなくてバランスの問題だったり、それぞれが相互に影響を与えることもあるのですが細かい点はスルーの方向で)

  • オペレーショナル・エクセレンス型
  • ブランド・プレミアム型
  • テクノロジー・イノベーション型

◎オペレーショナル・エクセレンス型戦略 これは業務効率を上げる事で相対的優位性を維持する戦略です。有り体に言えば「コモディティ化上等、それを補って余りあるくらい安く上げるもんね」という戦略です。

新聞社でやるならリストラしまくりーの、コスト下げまくりーの、海外ニュースは通信社配信垂れ流しまくりーの、安売りしまくりーの、みたいな事になると思いますが、まー実際は無理でしょうな。この戦略は往々にしてコモディティ化を激化させてチキンレースになるのですが、既得権益の馴れ合い麗しき友情が溢れる業界ですし、何よりプライドと現在の生活レベルが劣化することに、特に耐える事が出来ない人達の集まりですから。

◎ブランド・プレミアム型戦略 名前の通り、ブランド価値を上げるまたは高付加価値を得ることで、同業他社より高い価格でも十分に利益が確保できるだけの売り上げを得る戦略です。Appleや服飾・宝飾系の有名ブランドあたりの戦略といえば分かりやすいですね。

なかなかに魅力的な戦略ですが、ブランド価値なんぞそう簡単に得られる訳がありませんね。(だからこその”ブランド”です)ああそういえば、ある日突然「ジャーナリスト宣言」とかほざいた馬鹿な新聞社がいましたが、アレはこっちの路線を狙ってたのですかね?「それまでは何だったの?」という質問とセットで聞いてみたいものです。

あ、高付加価値方面で「特定層に向けて狭く深いベクトルの情報を配信する」という手はありだと思います。ある種の購入層(一般的に「物好き」とか「変人」と言われる層)は必ず存在するので、そこに向けて必要な情報を配信すれば一定のリターンは見込めます。そういう意味では、しばしば存在自体がネタとして扱われる東スポは、実は戦略として理にかなっていると言えるでしょう。

しかしながら一般紙ではあまり有効な戦略とは言えないので却下です。

◎テクノロジー・イノベーション型戦略 コンピュータ業界におけるインテルやnVidiaのように、飽くなき商品開発により絶対的優位性を保つという戦略です。新聞社に適用するなら記事の品質や信頼性を追求し、クオリティの高い紙面を送り出すことで顧客のニーズを満たし、売り上げに結びつける事になるでしょうか。おお、なんという王道。これで全てが上手くやれそうぢゃないか。

この戦略を選びますか? ・はい→14へ行け ・いいえ→続きを読め

残念ながらこの戦略は最もハイリスクなものです。

そもそも新聞社のビジネスモデルは「事実を編集し配信する」という非常にシンプルなもので、「事実」の品質には限界があります。事実以上の事実を伝えたら、それは一般的にねつ造と言われますね。(まあそれを平気でやってる新聞社が普通に存在する現状もどうかと思いますが)

したがって、品質を上げるのはもっぱら「編集」の部分になりますが、ここには紙面という物理的な制約が存在します。例えば紙面では一言で「9・11でアルカイダがアメリカに犯行声明を出しました」と書かれますが、これを背景となる過去のいきさつまで説明すると、おそらく専門書が一冊仕上がる量が必要となるでしょう。そこでニュースバリューや編集方針をもとに、ばっさりと事実の大部分を切り捨てる事となります。

もちろんそれが悪いという話ではありません。ここで言いたいのは、純粋に物理的な制約が存在しまた同業他社もほぼ同レベルの制約を受ける以上、一社のみが品質面で絶対的優位に立つことは難しい、という事です。上限が決まっているところにコストをかけて突進するのは、ハイリスクローリターンとしか言いようがありません。

さあ、八方ふさがりです。困りましたね。あー困った困った。(鼻をほじりつつ)

そこで私は考えました!公共性を持つ(らしい)マスメディア業界のみに許される、空前絶後の画期的解決法です。     なにもしない。     はいそこ、怒ってモニタを殴りつけない。かなり真面目に考えての結論です。

それに決して全く何もしない訳ではありませんよ。人減らしして収益(もしくは企業全体として許容範囲内の赤字)に見合うだけの規模に大幅縮小するのです。そもそも赤字部門や低収益部門は経営を圧迫するから問題となるのですが、逆に言えば経営を圧迫しない程度の赤字は、大義名分があれば許されるのです。

その上でこれまで通り、イベントの参加人数を水増ししたり、アメリカ国務省の発表を切り張り&曲解して真逆の方向に話を持っていったり、中学生の作文以下の社説・コラムを掲載すればいいのです。夢のような話じゃないですか。

え?そんな都合の良い大義名分があるのかって?あるじゃないですか、新聞の中の人がよく言う「公共性」やら「社会の木鐸」やら「文化的機能」やらが。足りない収益は、新聞以外のメディアをあらゆる手段で売り飛ばして補填すれば、何の問題もありません。

幸いにも、一般的な企業や団体では新聞を複数紙購読するのが当たり前ですし、減少する一方とは言え社会人が全く読まなくなるということはあり得ないので、必ずどこかで減少の底があるはずです。そこでバランスするよう組織の規模を再編すれば、十分に生き残ることはできるはずです。どこに底があるかは私の知ったこっちゃありませんが。

パーフェクトかつブリリアントでマーベラスな戦略です。Helminth型戦略とでも名付けて、ビジネスモデル特許を申請したいくらいです。実際は出版社における文芸誌が既にそういう存在なので、公知の技術として申請却下されると思うけど。   そんな事はあり得ないと思いますか?

朝日新聞社 本業不振で純利益85%減(※オリジナル閲覧不可のため孫引き)

(略) 次に朝日新聞社単体で見ると売上高が1,967億円であり前年比1.4%の減少とこちらもまずまずの成績。しかし中間純利益は7億しかなく、前年比85%減と大幅減益になった。営業利益は34億と前年比63.8%減であり、やはり本業不振が主因である。 中間純利益について見ると、連結ベースでの減少額は前年比39億81百万であるのに対して単体は前年比44億26百万の減少である。この点から、親会社である朝日新聞社は大幅減益であるが、他の子会社は増益であり親会社がグループ全体の足を引っ張っているというグループの状態が読み取れる。

でも私はこんな記事を読むと十分ありえる話だと思います。  

まー、本当のところは売り上げ部数が上がった(量的変化)時点で、コンテンツの意義を再定義(質的変化)しておけば良かったっつー身も蓋もない話なんですが、ふんぞり返っているうちにPoint of NoReturnは遙か向こうに行ってしまったという訳で、今後はせいぜい悶えながら悪あがきすればいいと思うよ。

◎すべてのまとめ

  • 一般的な方法論では新聞社に生きる道はない。
  • 社会的機能をエクスキューズとして余生をすごせばいいじゃない。
  • 絶望にィィィ!身をよじれェェェ!!この虫けらどもォォォォォ!

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Tracked on 2007.11.27 at 16:33

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